出生前診断・胎児診断・胎児ドック
出生前診断とは
近年、高齢妊娠や、不妊治療・流産などの経験があって、赤ちゃんの健康状態に不安をお持ちの妊婦さんが増えていらっしゃいます。
実際のところでは、赤ちゃんが生まれたときに、軽度のものを含めると約3〜5%の割合(20〜30人に1人)で先天的な病気が見つかります。
その内訳として、4分の1に染色体異常があるといわれています。
それ以外の病気として、染色体異常は伴いませんが、心臓の病気や形態的な奇形、臓器の機能の異常や発達の障害などがあり、程度としては軽症なものから重症なものまで含まれます。
「出生前診断」とは、お腹の中にいる間に赤ちゃんが病気をもっているかどうかを詳しく予測、もしくは診断する検査を代表して言われるものです。
「出生前診断」は、生まれてからある程度の時間が経たないと分からない病気(機能の異常や発達の障害など)をのぞいて、染色体異常や形態的な奇形を診断する検査として非常に有用なものとなります。
出生前診断を受けられるにあたって
現在検査には、超音波検査や血液検査、羊水検査などいくつかの種類があります。
特に、超音波検査を中心とした検査は、「胎児スクリーニング検査」「胎児ドック」「胎児診断」などと一般にはいわれています。
検査の中には、確定診断できる検査や精度の高い検査もありますが、すべての病気がわかるわけではありません。
それでも、この「出生前診断」を受けることによって、まだ見ぬ赤ちゃんが健康なんだと実感することができ、とても安心して妊娠生活を送ることができます。
万が一病気が見つかった場合でも、赤ちゃんの健康状態を第一に考えて、生まれてくるのに最適な治療法や、ご両親の迎え方を決める際にとても役に立ちます。
当院では、人の生命は生まれる前から始まっているという倫理観を大切にしております。
“Fetus as a patient(患者としての胎児)”という考え方のもと、お腹の中にいる赤ちゃんも一人の患者さんとして捉えていることから、この「出生前診断」を産科診療の中心に据えております。
妊婦さんとともに赤ちゃんの診察もしっかりと行い、もしも病気をもっていると考えられた場合には、十分なカウンセリングをご提供するとともに、適切な対処の方法をご夫婦と一緒に模索していきます。
病気の種類によっては、出生後すぐに治療が必要な場合もありますが、その際には、その病気の一般的な治療法や予後についてのご説明、専門病院の選択など、トータルなご支援を行っていきます。
サポート体制
遺伝カウンセリング
当院では出生前診断をご希望の方には、事前に必ずご夫婦で遺伝カウンセリングを受けていただきます。
出生前診断への理解を十分に深め、安心・安全に検査を受けていただくために、とても大切なカウンセリングとなります。
実際のカウンセリングでは、ご夫婦の疑問や不安に寄り添いながら、検査の種類や方法、対象の病気や診断の精度、検査の限界、考えられる選択肢などをご提示します。
また、検査結果については、予期せぬ結果に遭遇する場合もありますので、心理的支援を行いながら最善の対応方法をご提案していきます。
遺伝カウンセリングと検査のスケジューリングとして、下記に初期スクリーニング検査(コンバインドテスト)の実例をお示しいたしますのでご参考にしてください。
医療連携
出生後すぐに治療が必要となる場合は、医療連携している高度医療機関の中から、その治療に適切な分娩施設や病院を選んでご紹介します。
新しい命を迎えるために、万全な準備をするお手伝いをします。
出生前診断の検査内容
遺伝カウンセリングの後に、妊娠週数に合わせた検査を行います。
病気のリスクを推定する「非確定的検査」と、確定診断につながる「確定的検査」があります。
<非確定的検査>
赤ちゃんに病気のある確率を推定するスクリーニング検査です。
妊娠初期スクリーニング検査
主に染色体異常のあるリスクを推定する検査です。
コンバインドテスト (オスカー検査) |
11〜13週 ※12週が最適 |
NT(Nuchal Translucency)とは、赤ちゃんの首の後ろの透けて見える部分をいいます。 まず、超音波検査により最大幅を正確に計測します。 同時に、母体の血液中の2つの成分(free βhCG・PAPP-A)を調べ、両方の検査を組み合わせて貴方固有のリスクを推定します。 別名、オスカー検査(OSCAR:One-Stop Clinic for Assessment of Risk)ともいい、初期胎児のリスク評価をなるべく一回の受診で行うというもので英国胎児医学財団(Fetal Medicine Foundation)から紹介されたものが基本となっています。 検査結果は、専用のソフトウェアで確率を算出して、本当にリスクがあるかどうかを評価します。 |
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超音波検査のみ | 11〜13週 | 超音波検査により、NTや心拍数計測、鼻骨の観察、心臓内外の血流を計測します。 4D超音波検査も行います。 検査結果は確率で算出し、検査を受けたその日にわかります。 双胎(双子)の場合でも検査可能です。 |
クアトロテスト® | 15〜17週 | 母体の血液中の 4 つの成分(AFP・非抱合型E3・hCG・Inhibin A)について調べる血清マーカー検査です。 双胎(双子)の場合でも検査可能です。 |
妊娠中期・後期スクリーニング検査
主に赤ちゃんに染色体異常以外での形態的な奇形や病気があるかどうかを調べる検査です。
中・後期超音波スクリーニング検査 | 18〜30 週 |
頭部・脊椎・胸部・腹部・四肢・顔面の各部位の詳細な形態の評価を行います。 基本的に、妊娠20週前後では赤ちゃんの致命的な病気の診断を、28週前後では赤ちゃんの心臓などの内臓の病気の診断を中心に行います。 |
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<確定的検査>
赤ちゃんの染色体異常の確定診断に用います。
羊水検査 | 15〜18 週 |
お腹に局所麻酔をした後、針を穿刺して羊水を採取し、羊水中に含まれる赤ちゃんの細胞の染色体を調べます。 |
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初期スクリーニング検査の診断精度
初期スクリーニング検査の種類と、それぞれの対象となる病気とその診断率、当院で可能かどうかについて下記に示します。
これらの検査は、それぞれ検査時期と対象となる病気、診断率が異なるため、十分な遺伝カウンセリングにより納得された形で選んで受けることが大切です。
また検査結果によって、別のスクリーニング検査を組み合わせて診断率を高めたり、確定的検査である羊水検査で最終的な判断をすることもできます。
後日に、中期・後期の超音波スクリーニング検査を受けていくことで、さらに広い範囲の赤ちゃんの病気の診断に役立てることもできます。
その他くわしいことにつきましては、以下のQ&Aもご参照ください。